#01【2010年10月公開】

今、だから新聞

創作の大切な情報源

漫画家・荒川弘さん

荒川弘さん(あらかわ・ひろむ) 1973年生まれ、北海道出身。漫画家。

2001年から10年6月まで「月刊少年ガンガン」(スクウェア・エニックス)で連載されていた「鋼の錬金術師」は、深いキャラクター設定、壮大なスケールのストーリーで圧倒的人気を博す。04年同作品で小学館漫画賞受賞。

  「新聞によって、報道する立場や見解が少しずつ違うでしょう。いろいろな新聞を読みたいと思っているんです」と語るのは、漫画家、荒川弘(ひろむ)さん。現在、単行本26巻で累計4500万部という大ヒットを飛ばしている漫画「鋼の錬金術師」(スクウェア・エニックス)を生んだ人だ。
 「鋼の錬金術師」は、錬金術が力をもつ異世界が舞台。錬金術師のエルリック兄弟は、死んだ母親を生き返らせようと、禁じられた「人体錬成」に手を染めて失敗。その代償として失った体を取り戻すため、2人は旅に出る。「月刊少年ガンガン」で連載し、6月に最終回を迎えた。単行本最終巻の27巻は11月に刊行予定だ。
 物語を作るうえで、新聞は大切な情報源だったという。例えば、主人公である兄、エドワードがなくしたのは右手と左足。彼は「機械鎧(オートメイル)」と呼ばれる義肢をつけている。「義手や義足関係の記事が役に立ちました」
 「人体錬成」のほかにも、「人造人間(ホムンクルス)」「合成獣(キメラ)」など、身体を改造したキャラクターが大勢登場する。「iPS細胞(人工多能性幹細胞)など、身体分野の記事は興味をもって読んでいます。研究の進化のスピードがすごいですよね」
 さらに、各紙が例年8月を中心に特集する戦争をめぐる記事は、「作中で描く戦乱のヒントになった」と振り返る。
 荒川さんは、北海道・十勝の酪農農家に生まれた。朝刊は、前日の夕刊とともに昼ごろ郵便局が配達していたという。中学生のころ、地元紙に1コマ漫画を投稿していた。採用されると800円の原稿料がもらえる。「毎月の小遣いがなかったから、稼ごうと思って。採用されたのは2、3回でした」
 1999年にエニックス21世紀マンガ大賞を受賞して上京。アルバイトや漫画家アシスタントを経て、2001年から「鋼の錬金術師」の連載を始めた。この作品はどうやって生まれたのか。
 日本有数の酪農地帯で育ち、牛のクローン技術の最先端に接していた。「クローン牛はあまり丈夫でないのか、生後すぐ死ぬものが多かった。それが不思議でした」
 上京後、警備会社のアルバイトでリハビリセンターの場内工事の現場に行ったことがある。義手や車いすの職業訓練施設や、義肢装具センターがあった。交通事故で足を失った人が、当時のむちゃな運転を教訓にして強く生きている姿が心に残った。「失ったものの代わりに得るものがあるということを考えました。私にはわからないものを心には抱えているのでしょうが、あっけらかんと話をしてくれた」
 そんな記憶のかけらと、「壁や床から、武器など別のものを作って取り出したら絵的に面白い」といったアイデアが組み合わさり、物語が誕生した。
 新聞はネットと違い、ニュースの重要度で記事の大小があることが有益だと指摘する。「世間的にはこれが大事なのか、ということが分かる。それに、ランダムに情報を拾おうとするなら新聞です。ざっと読んでいて、目がとまる記事がある。なぜ気になったか考え、そしゃくすると、今、自分が何を考えているか再発見することがあります」
 お金がない時でも、新聞だけはとっていた。「ずっと付き合っていきたい媒体です。ページをめくるたびに何が出てくるのか楽しみ。時間をかけてゆっくり読めるし。そもそも、紙が好き。持ち歩きできるし、読み終わった後も使い道がある。そのうえリサイクルできますよ」

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